実家の建替え経験談

実家の建替え経験・・・家づくりに油断は禁物。
実家の建替え経験・・・家づくりに油断は禁物。

2004年の新潟県中越地震の前年に、実家(十日町市)を建替えしました。
解体される家は、1965年くらいに建てた2階建ての木造住宅です。
何度か増改築をし、両親にとっては終の棲家となる予定でした。
いずれ古くなった水回りをリフォームし、夫婦だけの生活を過ごそうと考えていたようです。

しかし弟家族が同居を申し出たために、急遽、建替えへと進んでいったのです。
建替えに決まってからは、私の方で敷地測量や調査を行い、間取りを考えていきました。
高床にはしたくない(両親が年老いたときに、階段の上り下りが大変になるため)、敷地が変形していて狭い、屋根の雪は融雪設備(当時は灯油代が安かった)で融かす、祖母の部屋も作るため最大で7人の居住、車は3台で建物にビルトインする、イニシャルコストをできるだけ掛けないなど、いくつかの条件や要望を加味しての家づくりとなりました。

当時、私は新潟市内で住宅建築の仕事をしていたので、常に実家の家づくりをチェックするわけにもいかなかったのですが・・・。

実家建替え 営業マン

ある程度の間取りと予算組が出来たところで、住宅会社選びです。
ここで父親が暴走してしまいます。
地域では有名な工務店の見学会に行き、営業マンを気に入ってしまい、そこで建てようと決めてしまったのです。
そこからは、父親と営業マンとの独壇場となってしまいました。

その営業マンも父親も、住宅建築の素人同士です。
間取りが変更になり、敷地の調査も見ず、見積書もいい加減、建物の仕様や性能は最低限(予算が厳しく間取りを広くしたため)、融雪の知識もなく積雪時に融けにくい屋根型となってしまいました。

最終的に、当初の予算をはるかにオーバーしてしまいました。
契約後、父親は「こんなはずではなかった・・・」と口に出していました。
家族を信用せず、工務店の営業マンを信用した結果です。

私がそれらの事情を知ったのは、すでに契約後でした。まあ、本人たちが良ければそれでいいか、くらいに思っており、工事が始まったらちょくちょく見に来ようと思っていました。

ようやく詳細な打合せが終わり、基礎工事が始まりました。
工事の進捗状況を見に、実家を訪れたのは、基礎の型枠を外した時でした。

実家建替え 鉄筋 鉄筋がコンクリートの外にはみ出している

私は基礎の状況に目を疑ってしまったのです。
ほとんどの基礎のコンクリートの脇から、鉄筋が出ていたのです。
要は、鉄筋の「かぶり」が全く無い状態でした。完全な欠陥工事であり、間違った施工管理です。
家族と現場監督は全く気に掛けていません。
そこで私は、大手の建設会社の顧問をしている叔父を呼び、この状況を見て家族に説明してほしいと依頼したのです。

叔父は、開口一番、こんな工事はあり得ない、と言ったのです。
そこで、ようやく家族がこの事態の危機に気づいたのです。

工務店の社長を呼び出し、この基礎について見解を述べてもらいました。
その社長は問題無い、許容範囲だと説明したのです。そこで、私と叔父の正体を明かしました。
次の瞬間、工務店の社長の態度が変わったのです。
すぐに基礎の工事をやり直します、とあわてて言ったのです。

後日、工事をした下請の基礎業者を呼び、社長と業者で現場打合せをしていました。
その時の基礎業者の言い分は、俺らは言われたことをしただけだ、とのこと。
一方で社長は、言った約束通りの基礎工事がなされていないと、両者とも水掛け論となってしまいました。

最終的に、基礎業者は、施主のいる前で「ふざけるな、やり直しはしない」と言って、帰ってしまったのです。
そこで、これからどうするのかを社長に聞いたところ、別の基礎業者でやり直すと約束したのです。

実家建替え ボルトが止まっていない

その後は無事に工事が進み、上棟式を迎えました。私も参加し、一通り建物の骨組みを確認しました。
そこで目にしたものは、梁に通されたボルトがきちんと止められていない状況です。
1か所ではなく、何か所も止まっていなかったのです。

そこで、現場監督に確認しました。これはどうゆうことかと。
すると現場監督は、すみません、忘れていました、と言ったのです。
もし、私が指摘しなければ、このまま工事が進んでしまったのでは、と聞いたところ、その通りです、本当にすみません、と謝ってきました。

現在では、住宅瑕疵担保法によって、このような欠陥工事が少なくなっていますが、当時はこれが当たり前の家づくりだったのかもしれません。(この地域では)

どんなにいい加減な住宅会社であっても、外からの見た目ではわかりません。
更に、家を作ってからでも、その建物が良い建物なのかは家族にはわかりません。
何かが起こって初めて良くない建物だと知ることになるのです。
その時にはすでに手の施しようがありません。

良くない建物でも、なかなか欠陥住宅として認められません。欠陥だと認定されなければならないのです。
それまでは、工務店は自社の否を認めようとはしません。

そんな住宅会社を選んでしまっても、第三者(中立的立場)のサポートを受けると、そのリスクは大きく軽減されるのです。

良い住宅会社を選びたくても、良い住宅会社がどれなのか、家族には判断できにくいのです。
また、良くない住宅会社を選んでも、良い仕事をしてもらうことが、サポート次第でできるのです。

そうこうしているうちに、建物の完成となったのです。
仕上げは何とか満足のいくものとなったようです。
しかし、古い家よりはまし、というレベルです。
ただ冬は寒く、夏は暑い家となってしまいました。
営業マンと父親主導での間取りや仕様では、やはり家族にとっては使い勝手が悪いところもありました。
しかしその間取りに合わせて、これから暮らしていくしかありません。

結果的に、私が考える家づくりとは、真逆の家づくりとなってしまったのです。

翌年、中越地震が起こりました。運よく実家の損傷は、最小限で済みました。
ただ、基礎の欠陥、建物の骨組みの欠陥が、そのまま放置されて完成していたら、恐らくは、二度と住めない状況にまで崩壊していたかもしれません。
その危険性を家族に話したら、ふ~ん、と言って聞き流されました。
人間、痛い思いをしないとわからないのだなあと、あらためて実感してしまいました。

今でこそ、その工務店も技術的に改善され、良い住宅を作っているようです。
良い住宅とは、良い材料を使い、良い人が作るということです。
私たち住宅業界人は、良い材料はお金で買えるため、さほど問題視していません。
問題なのは「人」です。

良い材料は、だれでもわかりますが、良い人は、だれでもわかるものではありません。
だからこそ、重要な事なのです。

実家建替え 教訓

実家の建替えでの教訓

  • 営業マンで家づくりを決めないこと
  • 下請業者は安さだけで決めないこと
  • 住宅会社の社長の姿勢をしっかりと見極めること
  • 住宅会社の社員の能力を確認すること
  • 家族のコミュニケーションを十分すること
  • 第三者の「目」を活用すること
  • 家族の予算から家づくりをしていくこと
  • 家づくりの基準や優先順位を間違わないこと

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