家づくり講座 ⑥ 【性能と品質】

家づくりの性能や品質。実際に家づくりをするのは専門業者や職人です。
どんなところに注意を払うのか、確認していきます。

目次

  1. 概要
  2. 住宅性能表示基準の10分野
  3. その他の住宅性能の評価指標
  4. 品質について(コミュニケーションの品質)
  5. 品質について(建物の施工の品質)
  6. まとめ

1. 概要

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一生に一度の家づくり、建物の性能や品質は、どんな点に注意したらいいのでしょうか。
車や家電のような工業製品は、厳しい基準が設けられ、性能や品質は高いレベルで生産されています。
一方、住宅建築に関しては、多くの方が思っているほど性能や品質がこれまで担保されていませんでした。建築基準法を順守しても、あくまで書類上のことであり、現場では各住宅会社独自の工事がなされていました。

そのため、手抜きや欠陥工事、保証や責任のあいまいさなど、社会問題にもなってきました。
そこで、2000年4月1日に住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が施行されました。

品確法の柱は、「新築住宅の瑕疵担保責任に関する特例」「住宅性能表示制度」「住宅専門の紛争処理体制」の3つとなります。
住宅建築の基本構造部分について10年間の瑕疵担保責任の義務、住宅性能を契約の事前に比較できるための性能表示基準の設定、住宅性能評価書を交付された住宅に係わるトラブルへの裁判外の紛争処理体制の整備となっています。

ここでは、建物の良し悪しに係わる重要な要素として、住宅性能表示制度などから住宅の性能の内容を確認していきます。
いくら書面上の性能を比較しても、実際に現場での施工状況によって、品質は変わっていきます。
それらの性能を実際の施工に活かすための施工品質について確認します。

今どきの住宅建築では、手抜きや欠陥工事なんて起こりっこない、と無意識で思っている方も多いのではないでしょうか。
また、ローコスト住宅などでも、最低限でもそれなりの性能や品質で作っているだろうなど。

本当にそうでしょうか。
住宅建築に使う建材(材料)や住宅設備機器などは、工業製品のため性能や品質はある程度一定です。
しかし、家づくりの大半は、機械ではなく専門業者や職人といった人間が作り、その管理を現場監督などの人間が行っているのです。
また、紛争に巻き込まれた場合、現在でも消費者(施主)の声が届かない場合もあるのです。

住まいを取得することは、営業などのサービスを買うことでもありますが、それで納得のいく建物とならなければ本末転倒です。

皆様はよく「家を買う」という言い方をすると思いますが、文字通り、家族に合った性能や品質で作られた納得できる家を買って頂きたいと思います。


2. 住宅性能表示基準の10分野

住宅性能表示基準 性能保証
住宅性能を比較検討するとき、指標となる分野を記載しました。
詳しくは「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」及び見直しをご覧ください。

1.構造の安定

住宅は、地震・暴風・積雪などの様々な自然環境の影響を受けることがあります。

ここでの基準は、最低等級である建築基準法レベルを「等級1」として、損傷防止や倒壊等防止のため、目標値を設定しています。

損傷防止は、数十年に一回は起こりうる大きさの力に対して、大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷が生じないこと。

倒壊等防止は、数百年に一回は起こりうる大きさの力に対して、損傷は受けても人命が損なわれるような壊れ方をしないこと、とあります。

それぞれ、地震・暴風・積雪などで、等級1(最低)から等級3(最高)の構造に関する目標値の設定があります。

気象の変化が激しくなってきている昨今、構造のことに多くの関心が集まっています。
ご家族の安心・安全を担う構造の住宅を選びたいものです。

2.火災時の安心

万一の火災時に、人名や財産を守るという目標を設定しています。

早期の火災の感知として、感知警報装置設置等級が1から4まであり、等級の数字が上がるたびに高い性能として評価されます。
延焼のある部分においても等級があります。火炎を遮る時間の長さ(20分以上や60分以上)で対価性が評価されます。

近隣の火災に巻き込まれる可能性もありますので、家づくりでも十分に考慮する必要があります。

3.劣化の軽減

住宅に使用されている材料等は、水や湿気、汚染物質などの影響を受け、腐ったり錆びたりなどの劣化が生じます。

その影響で、住宅の耐用年数が下がったり、早期の修繕が必要になったりします。
それらの劣化対策にも等級が設置されています。

最低限の建築基準法である等級1から、劣化を遅らせる対策をとる等級3まであります。

家は作ったら終わりではなく、その後もメンテナンスをしていくことで、建物の劣化を防ぎながら長持ちさせていくことが大切です。

その場合、多少の費用が掛かっても、劣化対策をお考えになってはいかがでしょうか。

4.維持管理・更新への配慮

建物は、構造躯体などの比較的耐用期間が長い部分と、配管や内外装などの比較的耐用期間が短い部分とが組み合わされてできています。

建物躯体では前述の劣化対策などでの評価となりますが、配管などは、日常の点検や補修など、維持管理を容易にするための対策を講じることが、より重要と考えられます。

維持管理のしやすさによって、等級1から等級3(しやすい施工)によっての評価があります。
建物の躯体を壊さなくても、配管などのメンテナンスができるように考えたいものです。

5.温熱環境

住宅室内で、四季を通じた冷暖房のエネルギーの消費量を削減(省エネ)し、外壁や窓や機器など建物の断熱措置の指標です。
国策としての省エネだけではなく、今後の生活での光熱費の出費に、大きな影響を与えるものです。

評価として、断熱等性能等級があり、等級1から等級4まであります。
現在、多くの住宅は等級4(最高値)、いわゆるH25基準相当の性能で作られます。

また、一次エネルギー消費量等級があり、最高値の等級5は、低炭素基準相当となります。
家づくりで多くの方が検討するのが、温熱環境(家の燃費の良さ)です。
広告やチラシに、温熱環境による数値として、UA値(外皮平均貫流率)・C値(相当隙間面積)などを目にします。

それらの数値が良い住宅なので、性能が良いなどを謳っていますが、その結果、どのくらいの燃費になっているのかがわかりません。
車のように自動車メーカーが燃費基準を公表しているように、各建築会社が家の燃費を出しているかというと、そうではないのです。

住宅は車とは違い、気象条件や建材、施工品質(住宅会社の基準や職人の技術など)によって、大きな差がでてくるのです。
また、同じ工務店の建てる家でも、条件次第で家の燃費に大きな差が出てしまう可能性があるのです。

建物の温熱性能次第で、年間10万円以上の光熱費が節約されたとしたら、30年で300万円となります。温熱性能を高める度合いは、どれだけのコストを掛けるかで変わりますが、材料だけではなく、施工品質も考慮する必要があります。

6.空気環境

建物室内の内装材等からのホルムアルデヒドの発散を少なくする対策(シックハウス対策)、ほこりや微生物や湿気など、室内の空気の換気対策についてです。

現在では、どの建築会社でも低ホルムアルデヒドの建材を使用し、24時間換気を行う建物になっています。
建築会社の標準仕様や予算などで、自然素材の内装にしたり、機械換気(第一種換気)にします。

7.光・視環境

建物内の生活で視覚に大きな負担を与えないように、採光のための窓の大きさや位置、方位別のバランスを評価します。
同時に、窓は風の流れ具合や、季節のよって風向きがかわるため、設計時に考慮しなければなりません。

8.音環境

住宅では、外からの騒音や、室内の足音の伝わりなど、音に関して考慮する必要があります。
音は振動によって伝わりますので、そのための遮音対策となります。

9.高齢者への配慮

加齢や病気、怪我などによって、身体の機能が低下すると、室内で思わぬ事故を引き起こしてしまうことがあります。
また、車いすを使ったり、介助の助けが必要になったとき、廊下など必要なスペースが確保されていないと不都合を感じます。

これらに対し、高齢者等配慮対策等級が設けられています。
段差や手すり、部屋の配置、車いすへの対処など、考慮したいものです。

10.防犯

当地域でも、防犯への意識が高まっています。
外部からの侵入防止対策として、窓や玄関ドアなどを考慮しなければなりません。


3. その他の住宅性能の評価指標

現在では、BELS・ZEH・HEAT20・サステナブル・パッシブなど、様々な性能評価があります。
これらの言葉を用いた広告やチラシを目にすることも、多くなりました。

主には、省エネ住宅の推進となっています。
いかに一次エネルギーを削減した住宅にするか、ということです。
高度な省エネ住宅にするほど、建築コストが多く掛かってきます。
予算とのバランスが大切となります。

また、長期優良住宅基準、低炭素基準などの言葉も多く掲載されています。

フラット35での借入金利が優遇されたり、補助金の対象となります。
但し、建築コストが掛かったり、維持管理が必要など注意が必要です。

参考リンク:BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)について(一般社団社団法人 住宅性能評価・表示協会 HPへ)


4. 品質について(コミュニケーションの品質)

注文住宅を建てる場合、家づくりを終えた方の不満要素として上位にくるのが、担当や社員とのコミュニケーション不足です。
また、社員同士や下請業者との情報伝達に関しての不満です。
品質というと、建物の品質に目が行きがちですが、コミュニケーションも品質と捉えることをお勧めします。
どんなことが不満点であがっているのか、見ていきましょう。

  • 要望が伝わらない
  • 要望と違うものが施工された
  • 担当者に嘘をつかれた
  • 社内の担当者(営業・設計・現場監督・事務など)同士の意志疎通ができていない
  • 下請業者に実際とは異なる図面が渡ってしまった
  • 契約後からリスクを伝えられた
  • 間違った施工を直してくれない
  • 約束したアフターメンテナンスをしてくれない

実績があり大手の会社ほど、家づくりのプロセスは分業化されます。
それに応じてコミュニケーションのリスクが高くなります。
せっかく安くて良い材料を使って建てる家でも、情報の行き違いがあったら台無しになってしまいます。
いくら窓口の担当者との相性が良くても、その後の社員や下請業者まで相性が良いとは限りません。
コミュニケーションの品質の低下は、建物の品質の低下へと発展してしまうのです。
施主側もお任せで依頼するだけではなく、要望や情報の伝達を、末端まで担保する意識を持つことが大切です。
いまだに家づくりは人間の手で作られています。
人の手が多いほど、情報の不備へのリスクは高くなってしまうのです。
取り返しがつかなくなった施主や、家づくりをしなければよかったという施主を、いまだに業界人は多く目にしています。


5. 品質について(建物の施工の品質)

多くの住宅会社では、自社の施工基準や施工方法を決め、それを下請業者に発注し施工してもらっています。
設計図や詳細図、施工手順や施工技術などです。
それらは、建物の性能を担保するために、とても大切な基準です。

施工基準があって、それを社員や下請業者とで共有しなければ、安定した品質の建物は出来上がりません。
また、施工基準をしっかりと守っているかどうか、その担保として施工管理をしなければなりません。
このあたりのことは、一般の施主にはわかりようもないことです。
建築会社を信じるしか手はありません。

実は、信じるしかない建物の品質、それこそが家づくりで最も肝心なことなのです。

前述した住宅の性能評価などは、机上のものです。
それを施工で証明してこそ、住宅性能が担保されたということです。

多くの住宅会社では、社員が施工をしません(一部の社員職人を雇用しているところもありますが)。
住宅性能や施工基準を作るのが、建築会社や社員です。
その基準に準じて施工するのが下請業者です。

この連携がうまくいっている建築会社を選ばなければ、家づくりは失敗か後悔することになるでしょう。

施主ではわかりかねる建物の品質、いかに見える化がされているのか、そこが肝心です。


6. まとめ

大手の住宅会社も、小さな工務店も、現在では性能や品質に差がありません。
品確法の制定やマスコミなどが報じる手抜きや欠陥工事の報道などによって、以前のようなあからさまな手抜き工事は減ってきました。

10年の瑕疵保証によって、最低限、建物躯体はきちんとした施工をしなければなりません。
但し、本当にしているかは、施主にはわかりかねるのです。信じるしかありません。

ただ、今どきの住宅は、性能(材料)がいいのは当たり前になっています。
そこでの会社ごとの差はほとんどないのです。

性能評価はどの会社でもできますが、品質に関しては気を付けなければならないでしょう。

その上で、家族の思いを叶えるオリジナルの住まいを所得したいものです。

これからの家づくりは、高品質と家族のコンセプトを叶えるオリジナリティが大切ではないでしょうか。


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