家づくりにおいて顕在化された問題と潜在的な問題について

これから家づくりをご計画の方には、直接的な問題ではないかもしれませんが、家づくりにおいては数えきれないほどの問題があります。

ほんの一例を挙げれば、住宅着工戸数の減少、手抜きや欠陥工事、職人や技術者不足、地場工務店の衰退などメディアなどで知ることができる問題です。
これらは顕在化された問題にあたるのではないかと思います。

顕在化された問題は、業界を知らない顧客でも知りえることができます。

一方で、住宅業界に従事する者でさえ気づきにくい問題があります。
それらは潜在的な問題であると考えられます。
むしろ、誰でも知りうる問題よりも、誰もが気づかない問題の方が、問題の程度は高いと私は考えています。

業界内でしか知られていないこと、業界内でも一部しか知らないことなどです。
一般の顧客には知るよしもありません。

大きなことでは、良い住宅に関しての「基準」の詳細が定まっていないことが挙げられます。
ある程度の基準については法で定まっているのですが、地域差の幅が大きく自然環境の影響を受けやすい住宅では、これがこの地域に合う住宅の基準であるという明快さは期待できにくいのです。

従って、住宅会社ごとに基準があり(ないところの方が圧倒的に多いのですが)、顧客が何を基準に良し悪しを検討できるかについて、明確な基準を示しにくいということです。

そのことにより、地域での経験値を基準にし、顧客に説得していかなければならず、最終的に信じるかどうかになってしまいます。

見えにくいところでは、住宅会社によって人的技術的格差が大きく、それが顧客にはわかりようがないことです。

住宅会社で働く社員や下請けの職人でさえ、自社の問題を把握している人は限られているのです。
自社の問題を解決に向かおうとすると、その会社から排除(解雇)されることもあり、それが問題意識を感じない組織として地域に根付いてしまうことを、顧客はまったく知りません。

そのために、多くの工事不備や詐欺行為が蔓延する住宅会社が、地域にとって実績のある優良会社として根付いてしまうのです。

むしろ目に見えにくい問題の放置こそが、住宅業界が昔から信用できない理由の大きな原因と考えられます。

家づくりの正しい情報を学んで家づくりをする顧客は、限りなく少人数です。
そして、一生に一回の買い物としての家づくりでは、リピートがほとんどありません。
家づくりを知らず家を買ったお客様の声という口コミでは、あくまで個人的な見解が語られているだけです。

様々な業界では、顧客のニーズやシーズによって進化を遂げてきました。

しかし、住宅業界は他業種と比較してほとんど進化していません。
人生で一回しか経験しない家づくりでは、顧客のニーズやシーズなど意味がないと言っていいかもしれないからです。

住宅業界が進化を遂げるとしたら、志を持つ顧客と業界人が自主的に進化させようとすること以外にないのです。
顕在化された問題は氷山の一角であり、潜在的な問題こそが、顕在化された問題を解決に向かわせることに繋がると思っています。

都会より地方に行くほど性善説を信じる人が多くなります。それ自体は良いことであり、そのことが地方の魅力を引き立てます。
しかし、それは都会から見た地方の魅力であって、地方の方々のメリットには繋がりにくいこともあります。

家づくりはまさにそうだと思います。

不備があっても騙されても営業マンを許してしまう。
要望を伝えても社長自身が出来ないといったら、そう信じるしかなく遠慮したり妥協してしまう。
地域で名のある住宅会社に頼まないと、この場所で仕事をしていく(生きていく)ことが難しくなる。
住宅会社の社員や下請け業者は、たとえ顧客に不利な状況でも、会社の命令を聞かなければ解雇になり、再就職が難しくなるため、悪いことでも良いことと信じて見過ごすなどです。

その積み重ねが、潜在的問題を拡大していくことを多くの方は知らないか、見て見ぬふりをしてしまうのです。
いづれ社内で問題を提起できる人材は枯渇し、社内での唯一の問題は「受注」だけになってしまうのです。

その傾向は地方に行くほど顕著となり、性善説から住宅業者を妄信する顧客と、受注だけが目的の住宅業者、という特殊で閉鎖的な市場環境となってしまうのです。

もちろん、そのような傾向に対し、歯止めを効かせようと熱意をもって頑張っている顧客や住宅業者がいます。
気づいた問題点を隠し事なく顕在化し、少しでも良い住まいを手に入れたい顧客、そして自らも問題を提起し改善や改革に臨んでいく住宅業者たちです。

いかにして問題に気づき、その解決を図っていくかということが、進化を促し価値を高めていく手段だと思っています。
地方で家づくりの仕事をしていると、その重要度の高さを痛感せざるを得ません。

勉強もせず自分だけ安くて得になりそうな家を買いたい顧客ほど、受注だけの住宅会社で契約をする傾向があるようです。
後悔しても後の祭りということを、彼らは知る余地もないのです。

魚沼地域の職人さんから相談を受けました。正確には愚痴を聞かされました。

取引先の住宅会社で自宅を建てているようです。
契約前の打ち合わせのときから、社長や営業マンに不信感が募っていったそうです。

職人さんといえども、自分の仕事以外は素人同然です。
そのことで何度も騙されそうになったとのことです。

それでもさすがに地域で有名な住宅会社だからと信じて、数々の不備を許してきました。
その後、あまりの不条理な言動に我慢できず、契約を破棄したいと申し出た、といった相談(愚痴)でした。

ちなみにその職人さんの奥様は、最初からその会社では作りたくないとおっしゃっていたようです。
(女性の直観は正しいですね)

契約まで行い、すでに工事が進んでいる状態では、顧客の声など住宅会社には届きません。
そのことを、その職人さんは軽視していました。
最後に自業自得ですねと言って帰っていきました。

潜在的な問題が積もりに積もって顕在化する。顕在化してしまった問題は、すでに解決することが難しくなっているのです。

そのことを家づくりの顧客も業者もわかっていません。
ただ家が欲しい、ただ家を売ればいいという考えが先立つからです。

その職人さんが帰り際に言ったことをお伝えします。

「うちらはお客のことなど考えてもいない。この仕事をいくらで引き受け、そこから利益を生み出さなければ食べていけない。

元請けの住宅会社から叩かれれば、お客のことなど関係なく、目立たないように手抜いて人工数を稼ぐしかない。

但し、責任を取りたくないから住宅会社の了解を得られたら、ということだ。それが実態だ。でも本当はこんなことはしたくない。

お客と会って1~2万円の追加となるが10年以上もちますよと。ほとんどのお客は納得できるはずだ。

しかし、それを納得させないのは住宅会社の社長と営業マンなんだ。それが本当につらい。

どれだけお客を裏切ってまで金が欲しいのか、おれには理解できない。本当にお客はそのことを知っているのだろうか。

今回のことでお客の立場がよく分かった。おれみたいになってほしくはない」


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