お話の脱線、住宅業界のこと
住まいづくりの仕事は、一度として同じものはない。全てがオーダー品。
同じ場所に、同じ住宅会社が同じ家を建てても、品質は同じではない。
現場で仕事をする職人と管理の仕方で、品質は天と地ほどの差が出てしまうのだ。
そのことを顧客はあまりご存じないのではないかと思う。
我々の生活はすでに、工業製品であふれかえっている。
すべては出来合いの商品、それを買って、そのまま使うことに慣れている。
住まいづくりも同じように考えている方が多いのではないか。
将来、AI(人工知能)が顧客の思いを汲み取り設計し、
材料はすべて規格化された工業製品、現場に3Dプリンターや製造マシンがやってきて、
人間無しで家を作ってしまう。
そうなれば、手抜き工事もなくなり、建築価格も明快となる。
いわゆる、車や家電のように「家」という「商品」を「買う」ということだ。
しかし、今はそうはいかない。人間の労力(感情や意志や倫理観)に頼るしかないのだ。
品質よりも安さを求める顧客に対し、住宅会社は職人の工賃を叩く。
どこかで工事を手抜かなければ、職人は生きていくことができない。
品質よりも安さを求める顧客に対し、住宅会社は社員を叩く。
顧客の思いや要望を丁寧に聞いていたら、サービス残業が増えるだけ。
人間は感情の生き物、とても弱い。
けれども一方で人間の意志は、とても強い。
その意志は、「目的」と「絆」が強くしてくれる。
顧客の住まいづくりプロジェクトを成功させる、という目的、
プロデューサーや業者や職人、そして顧客がチームとして団結し、
互いに絆を深めていく。
そんな住宅業界であってほしい。